【ジブリ映画】『紅の豚』の飛行機を徹底解説!実物?実在する?ポルコの語る「飛行機の墓場」の元ネタは?

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    1992年公開の宮崎駿監督が手掛ける長編アニメーション映画『紅の豚』では、ポルコの乗る真紅の飛行艇や紺色をしたカーチス飛行艇を筆頭に数多くの飛行艇(飛行機)が登場。飛行機好きはもちろん、あまり機械に興味がない人でも憧れてしまうような空の世界が魅力的ですよね。『紅の豚』で登場する飛行艇は全てが宮崎駿によるオリジナルではなく、実在するメーカーや元ネタとなった実話が存在したりします。その真相について追求していきます。

    こんにちは、Reneです。
    宮崎駿監督が手掛けるジブリ映画といえば、ナウシカ、キキ、ソフィ、さつきとめいなど勇ましい少女が主人公になることが多いですよね。

    そんな中、1992年、ある理由からブタの姿になった中年男を主人公に「かっこいい」の真理を説くロマン溢れる長編アニメーション映画『紅の豚』を発表します。

    ジブリ映画の中でも異色と言われる『紅の豚』ですが、今までもいろいろな飛行物体を物語に登場させてきた宮崎駿監督が、惜しみなく“飛行艇愛”を炸裂させた作品です。

    今回は、『紅の豚』で登場するポルコの愛機“サボイアS.21”やカーチスの愛機“カーチスR3C-0”を始めとする飛行機(飛行艇)について徹底解明していきます。

    『紅の豚』のあらすじ

    『紅の豚』のあらすじ
    出典:公式サイト
    『紅の豚』のあらすじ

    舞台は、“古き良き時代”とはかけ離れた戦争が身近に迫りつつある1920年のアドリア海。

    その日の食事すらまともに摂ることができなくなった空賊たちと彼らを狙う賞金稼ぎたちが、常に攻防戦を繰り返していました。

    賞金稼ぎの中でも群を抜いて功を制していたのがポルコ・ロッソ。

    元イタリア軍・空の舞台でエースだったポルコは、過去の出来事から自らを呪い、豚の姿になっていたのです。

    ポルコを取り巻く女たち、空賊との決闘、ライバルとの宿命、青空を飛び回る深紅の愛機など、誰もが人生を謳歌していた時代の飛行艇乗りたちを描きます。

    ◆飛行艇と飛行機の違い

    まず、『紅の豚』で登場する「飛行艇」は、私たちが旅行などで普段から乗っている「飛行機」とは少し異なります。

    車輪がついており陸面発着が一般的な飛行機です。

    一方、飛行艇とは、飛行機の一種なのですが、「水面発着」ができて「水上に浮かぶことができる」ものを指します。

    そのため、車輪がついておらず、一般的な陸用飛行機とは異なる設計がされているのです。

    『紅の豚』の飛行機:飛行艇は実在する?

    本編では、深紅と紺の対極的な色合いをしたポルコとカーチスの飛行艇の存在感が目立っていましたが、こちら知る人ぞ知る戦闘機としてかつて実在していたことが分かりました。

    『宮崎駿全書』で以下のような言及がされています。

    ・本作に登場する戦闘飛行艇は「幻の戦闘機械」として存在していた
    ・陸上できるタイプのものではなく、水上着陸のみ対応している車輪なしの“Fringboat”
    ・戦闘用に使われていたのは、第一次世界大編から第二次世界大戦に至るまでの短期間
    ・オーストリア=ハンガリー軍、イタリア軍などの一部でのみ使用された

    つまり、ほんの一時的に一部の軍隊でのみ使用されていたのです。

    宮崎駿監督は、メカ好き、ガジェット好きで知られていますが、彼のオタク魂によって、かつて「幻」とされていた飛行艇は「伝説」へと昇華されていきます。

    歴史的にも多くの人に語り継がれている飛行艇ではなく、「失われた可能性」のある飛行艇を復活させる意図で制作に挑んだ宮崎駿監督。

    昔、どこかでポルコやカーチスの飛行艇が空を飛んでいた時代があったと思うと感激ですよね。

    完全オリジナルのようだけど、実は存在していたという事実によって、『紅の豚』のロマンと憧れが増し、ファンを魅了することになります。

    『紅の豚』の飛行機:ポルコの愛機「サイボアS.21」について

    ポルコの愛機「サイボアS.21」について
    出典:公式サイト
    ポルコの愛機「サイボアS.21」について

    深紅を基調として後方部分には、イタリアの国旗の三色カラーで装飾されたポルコの愛機「サイボアS.21試作戦闘飛行艇」。

    操縦難易度があまりにも高すぎて「危険すぎて誰も乗れない!」と言われていた飛行艇のため、倉庫の奥で埃をかぶっていたのですが、ポルコが買い取り、巧みな操縦技術で上手に乗りこなす姿が印象的です。

    まだまだメンテナンスが必要であったため、“試作”という言葉が入っているのですが、フィオによって改修された後は、「サイボアS.21F」に改名されています。

    最後のアルファベット“F”については、設計主任を務めたフィオのイニシャルです。

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    ◆サイボアS.21のモデル機

    ポルコの愛機「サイボアS.21」の名前の由来となったのは「S.21(SIAI S.21)」、そしてモデルとなったのが「マッキM.33」と言われています。

    1921年に開催された飛行艇のスピード対決で勝者を争う「シュナイダーカップ」の優勝候補として制作されていたのが「S.21(SIAI S21)」でした。

    しかし、当日はパイロットの病欠により、空高く飛ぶことなく葬られてしまった幻の複葉艇。

    写真を見てみると分かりやすいのですが、ポルコの愛機とは外見が大きく異なり、飛行艇の上下2つに空気抵抗をコントロールするための羽がついています。

    『紅の豚』で登場する「サイボアS.22」は、「S.21(SIAI S21)」の名前と実際の逸話を継承していることが分かります。

    一方、「S.21(SIAI S21)」が欠場した次の次の回でのシュナイダーカップに登場したのが「マッキM.33」でした。

    幼少期の宮崎駿は、この「マッキM.33」の写真を見て興奮したことを明かしており、当時の記憶を頼りにポルコの愛機をデザインしたと話しています。

    「マッキM.33」は、シュナイダーカップで3位を記録しますが、アメリカ製の飛行艇に惨敗。

    当時、イタリアには強いパワーを持ったエンジンが開発されていなかったため、レース用として開発されていたアメリカ製のエンジンを使用したそうです。

    レース用に開発されたエンジンを使うと、最大320km/hという驚異的なスピードを出すことができるそうで、いかに飛行艇乗りという仕事がいかに命がけであるかということが想像できるかと思います。

    『紅の豚』の飛行機:カーチスの愛機「カーチスR3C-0」について

    カーチスの愛機「カーチスR3C-0」について
    出典:公式サイト
    カーチスの愛機「カーチスR3C-0」について

    ポルコ自身も腕の良さを認めるポルコの最大のライバルである飛行艇乗り、ドナルド・カーチス。

    カーチスが操縦する愛機「カーチスR3C-0」は、紺色を基調として「名声と金を運んでくる幸運のガラガラ蛇」と豪語する飛行艇です。

    『紅の豚』では、明言されることはありませんでしたが、“1925年第8回カップで優勝したR3C-2をドナルド・カーチスが購入して改造した”という裏設定があることを『宮崎駿全書』で言及しています。

    【ジブリ映画】『紅の豚』の飛行機を徹底解説!実物?実在する?ポルコの語る「飛行機の墓場」の元ネタは?

    ◆カーチスR3C-0のモデル

    カーチスの愛機「カーチスR3C-0」のモデルになったのは、1920年代で全米最大級の飛行機メーカー出会ったカーチス飛行機&モータース社からレース用に生み出された「R3C-2」と言われています。

    愛機につけられた名前は、カーチスのナルシシズムから来ているかと思いきや、実在するメーカー社名だったようです。

    カーチス飛行機&モータース社の創始者であるグレン・カーチスは、伝記ストーリーでもよく知られるライト兄弟の最大のライバルであり、水上機の先駆者でした。

    また、史実では、シュナイダーカップで、「カーチスR3C-0」は、「マッキM.33」に勝っているという事実もあります。

    これらを踏まえると、『紅の豚』に登場するポルコの最大のライバル、ドナルド・カーチスとカーチス飛行機&モータース社の創始者であるグレン・カーチスは、何かしらの血縁関係のようなものがあると考えられるのです。

    やはり、カーチスの飛行艇に関しても詳しく見ていると、史実と切り離すことのできない関係性が浮き彫りになるのでした。

    『紅の豚』の飛行機:「飛行機の墓場」の元になったストーリーとは?

    「飛行機の墓場」の元になったストーリーとは?
    出典:公式サイト
    「飛行機の墓場」の元になったストーリーとは?

    『紅の豚』の終盤、カーチスと再び交戦することとなったポルコが神妙な面持ちで過去を回想する「飛行機の墓場」シーンにも、元になったストーリーがあることが分かりました。

    ポルコがイタリア空軍の前線で戦っていた時、たったひとりだけ生き残ることとなり、敵も味方も全ての戦闘機が高い空へと運ばれていく様子を、見ていることしかできなかった話。

    『宮崎駿全書』によると“ポルコがフィオに語る『飛行機の墓場』については明確なモデルがある。ロアルド・ダール著『飛行機たちの話』(45)に収録された短編『彼らは年を取らない』がそれである”と言及されています。

    『彼らは年を取らない』に登場する主人公は、英国空軍として第二次世界対戦に出陣するのですが、無数の戦闘機が空高く飛んでいく光景を見ています。

    ポルコが、戦闘機の大群に加わることなく見守っていたのに対して、原作短編小説の主人公は、無意識のうちに大群に加わり、不思議な安堵感を抱いているカルト的なストーリー。

    また、同世代の兵士たちが死ぬ中、たったひとり中年になるまで生き延びているポルコに対して、原作短編小説の主人公は、襲撃を受けて死亡しています。

    アニメーション映画を通して「生命と尊厳」を幾度となく説いてきた宮崎駿監督。

    同じ空間にいたにも関わらず、たった1人だけ年をとっていく孤独、それでも悲壮と共に人生を謳歌するポルコは、かっこいいです。

    まとめ

    『紅の豚』に登場する飛行機(飛行艇)について詳しく追及していきました。

    『紅の豚』のメインキャラクターであるポルコとカーチスの愛用する飛行艇は、歴史的にもあまり語り継がれていないものの、ロマン溢れる史実と強い繋がりがあることが分かりました。

    宮崎駿監督の幼少期からの憧れやロマンが溢れる『紅の豚』は、ぜひ機体にも注目して鑑賞してみてください。

    【ジブリ映画】『紅の豚』の飛行機を徹底解説!実物?実在する?ポルコの語る「飛行機の墓場」の元ネタは?

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