【もののけ姫】シシガミの死に隠された宮崎駿のメッセージとは?シシガミを徹底解説!

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    自然と生命の尊厳を徹底的に描いた宮崎駿監督の『もののけ姫』。メッセージ性が強く難解な映画ですが、神秘的で独創的な神獣が登場するのが印象的です。神獣の生態やモデルについての解説はほとんどないので、気になるところ。この記事では、深い森の主として登場する「シシガミ」に焦点を当てて、キャラクターを深掘りしていきます。

    こんにちは、Reneです。

    『もののけ姫』に登場する神獣の中でも、神獣たちが暮らす森の主であり、不老不死の特殊能力を持っている「シシガミ」。

    劇中で大きな存在感を発揮しています。

    今回は、そんな「シシガミ」を徹底解説!

    宮崎駿監督は「シシガミ」に作品に込めた強いメッセージを託していると言われているので、そのメッセージについても詳しく解説していきます。

    『もののけ姫』シシガミ:作品概要

    サン
    出典:公式サイト
    サン

    『もののけ姫』は、豊かな暮らしのために森を開拓しようとする人間と、自分達が静かに暮らす聖域を守るために立ち向かう神獣たちの対立を描いた長編アニメーション映画です。

    原作・脚本・監督の全てを宮崎駿監督が手がけ、独特な世界観が表現された代表作として高く評価されています。

    ノスタルジアやハートフルな気持ちを揺さぶる作品を多く生み出しているスタジオジブリ映画としては珍しいほどダークで直接的な表現が多く、異質な存在感を醸し出す作品です。

    【ジブリ映画】『もののけ姫』のあらすじ紹介!結末ネタバレあり、こだまについてのトリビアも!

    『もののけ姫』シシガミ:シシガミのキャラクター

    シシガミ
    出典:公式サイト
    シシガミ

    それでは、『もののけ姫』に登場するシシガミについて、詳しく見ていきましょう。

    シシガミの見た目

    シシガミは、「猫」のような目鼻、「ヤギ」のような耳、「鹿」のような角、「ダチョウ」のような足、「カモシカ」のような長い毛、「犬」のような尻尾と、複数の動物が合体したような見た目をしています。

    ほとんど感情を読み取ることができないのですが、顔つきは、「猿」や「人」のようにも見えます。

    デイダラボッチに姿を変えるシシガミ

    デイダラボッチ
    出典:公式サイト
    デイダラボッチ

    シシガミは、夜になると「デイダラボッチ」という名前の巨大な生き物へと姿を変えます。

    宮崎駿監督による書籍『折り返し点1997〜2008』に、「夜になるとこの姿で徘徊し、森を育てている」と記述されているので、デイダラボッチがシシガミの夜の姿であることは明らかです。

    日本には、デイダラボッチと似た名前の存在として、山や湖を作った巨人「ダイダラボッチ」という神のような存在の伝承があります。

    ダイダラボッチの見た目は、人間のように二足歩行で、後頭部から背中まで青く光を放つツノを生やしていています。

    そして、「富士山を作った」「富士山を作るために掘った土の穴が琵琶湖になった」などのクスッと笑えるエピソードを残しているほど、砂遊び好きで知られています。

    そのことからすると、夜行性のデイダラボッチが、砂遊びのような感覚でシシガミの森を育てているという設定なのかもしれません。

    シシガミは肉食?草食?

    深い森の主として生きるシシガミの見た目や雰囲気は草食動物のようなのですが、実は、目の位置からすると肉食動物なのかもしれないと推測されています。

    通常、敵から逃れる必要のある草食動物の目は、視野を広くできるよう、横向きについています。

    一方、肉食動物の目は、狙った獲物との距離感を掴み、狩りの精度を上げられるように、前についているのです。

    シシガミの目は前についているので、実は肉食動物だと考えられているのです。

    ただ、シシガミは普通の肉食動物のように狩りをするのではありません。

    不老不死の特殊能力で生と死を操ることができることから、「命を捕食する」という意味で、肉食動物と同じ目の位置になっていると言われています。

    『もののけ姫』シシガミ:キャラクターのモデル

    シシガミ
    出典:公式サイト
    シシガミ

    シシガミのモデルについて、スタジオジブリは特に言及をしていません。

    ただ、シシガミの見た目は、複数の動物たちの要素が複合されたように見えるので、森に生息する生き物たちの集合体としてシシガミのような見た目が完成したと推測できます。

    さらに深く追求すると、「古事記」と「漫画家の諸星大二郎」が「シシガミ」と関係している可能性が浮上してきます。

    シシガミと古事記

    日本の神話を綴った書籍といえば、「日本書紀」や「古事記」が知られています。

    そのうちの「古事記」には、シシガミとよく似た鹿の神様「天迦久神(あめのかくのかみ)」が登場します。

    天迦久神は、立派なツノに、人間がまたがるための鞍を持っています。
    鞍から植物が生えている神秘性は、シシガミの神秘性に通ずるものがあります。

    シシガミと諸星大二郎

    宮崎駿監督は、漫画家である諸星大二郎の大ファン。

    『もののけ姫』のヒロイン・サンの顔のデザインや、デイダラボッチが森を徘徊する構図などは、諸星大二郎の漫画からインスパイアされたものではないかと囁かれています。

    そして、諸星大二郎の漫画『孔子暗黒伝』には、開明獣という名前の人の顔を持つ獅子が登場します。

    シシガミの顔は人の顔とまでは言えませんが、動物とは少し異なり、人間寄りのつくりですよね。
    そこに開明獣との共通点があるのではないかと思います。

    シシガミに感じる神獣たちとは一線を画した独特な雰囲気というのは、諸星大二郎の漫画『孔子暗黒伝』の開明獣からインスピレーションを受けていると言われても納得できてしまいます。

    『もののけ姫』シシガミ:シシガミは、環境破壊への警鐘を隠喩している

    シシガミ
    出典:公式サイト
    シシガミ

    ※ここからは物語の重要な部分に触れています。ネタバレになるので、映画『もののけ姫』をまだ見ていない人は、注意してください。

    映画『もののけ姫』で、シシガミは、人間のために森を開拓したいと考えるエボシ御前によって首を吹き飛ばされてしまいます。

    首が飛んだシシガミは、ドロドロとしたドス黒い血を流しながら、デイダラボッチの姿へと瞬時に代わり、首を取り戻すために暴走しながら徘徊を始めるのでした。

    ドス黒い泥のような体液は、シシガミの森を片っ端から覆い込み、植物や生命を腐敗させていきます。

    タタリ場までもデイダラボッチの体液に飲み込まれそうになっていたのですが、アシタカとサンがシシガミの首を取り戻したことで、暴走は止まります。

    しかし、本来、シシガミは夜の間しかデイダラボッチの姿でいることはできません。

    首が戻ってくるのが遅くなり、デイダラボッチの姿で朝日を浴びてしまったことによって、デイダラボッチは倒れ込みます。
    その後、森一帯を吹き飛ばすように膨れ上がり、どこかへと消滅してしまいました。

    この爆風によって、腐敗した植物などの生命が一斉に蘇り、辺りにうっすらと緑が広がるのでした。

    さらに、多くの負傷者が出ていたタタラ場の人たちの怪我も治癒していたことから、シシガミが取り込んでいた生命力や治癒力が一帯に放出されたと読み取ることができるのです。

    ◆消えたシシガミは、自然災害と同じで元には戻らない?

    『もののけ姫』の結末は、自然の多い森にしか生息しないはずのこだまが現れることによって、人間と神獣の対立によって消滅しかけた森が守られる形で終わったように見えます。

    しかし、サンとアシタカが交わす会話で、「蘇ってもここはもうシシガミの森ではない。シシガミ様は死んでしまった」というセリフが登場します。

    このセリフを深掘りすると、「一度失われた自然は、二度と元の姿には戻らない」ということ。

    宮崎駿監督は、「デイダラボッチの暴走が終わり、消滅と共に蘇った森は、かつて神獣や精霊が生息していた恐ろしい森(原生自然)ではなく、人工的な明るく無害な森(里山)になった」と話します。

    シシガミの森に入った時、人々は、「怖い」「不気味」と震え上がるのですが、それは、何千年もの時間をかけて作り上げた原生自然から人間以外の生命力を感じるからです。

    地球上には、人間が立ち入ることのできないエリアや、険しい道を通った人だけが見ることのできる原生自然があり、そこに流れる空気感は、独特で恐怖すら感じることもあるでしょう。

    現代において、そういった自然が人間の文明と科学の発展により失われ、人工林や整備された自然へと変わっていっているのです。

    つまり、『もののけ姫』はシシガミの死を通して、自然そのものは残ったとしても、原生自然に宿っていた歳月のパワーや生命同士の繋がりは失われているということを、伝えているのではないでしょうか。

    まとめ

    この記事では、映画『もののけ姫』に登場するシシガミというキャラクターに焦点を当てて物語を深掘りしました。

    シシガミは、宮崎駿監督が『もののけ姫』を通して伝えたかった「生命の尊厳」を強く反映したキャラクター。

    緑さえあればいいのか、時間をかけて形を変えて重みが増していく自然に価値があるのではないか、ということを感じさせてくれるキャラクターでした。

    ぜひ、『もののけ姫』を見るときは、シシガミに注目してみてください。

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    【もののけ姫】シシガミの死に隠された宮崎駿のメッセージとは?シシガミを徹底解説!

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